- 概要 -
中国の有名な故事であり、物ごとのつじつまが合わない様子を表す「矛盾(むじゅん)」に登場する「盾」と「矛」。「盾」とは、敵からの攻撃を防ぐために作られた板状の防具であり、「矛」とは、先端が丸みを帯びた両刃の剣が長い柄の先端に付けられた武器である。故事によると、この武具を商人が売るために「この矛はどんな硬い盾も突き通すことができる。この盾はどんな矛も通さない」と言い、「それではその矛でその盾をつけばどうなるのか」と言われたことに由来してできた語という。
- 詳しい解説 -
「盾(たて)」とは、敵からの攻撃を防ぐために作られた板状の防具である。手に持つものは手盾、地上に並べて置く垣盾に大きく分けられ、形は、他の物に引っかからないように円形をとったものや、長方形や逆三角形の前身を覆うほど大型のもの、槍や短刀が取り付けられたもの、先端がフックのようになり攻撃もできるものなどさまざまである。素材も鉄などの金属のほか、木製や革製、石製など時代により変化している。
一方、「矛(ほこ)」とは、先端が丸みを帯びた両刃の剣が長い柄の先端についた武器で、ひとつで、刺す、突く、斬ることが目的である。日本においては、青銅器で作られた弥生時代の銅矛が有名であり、朝鮮半島より伝わったとされる。
ひとつひとつは防具、武器で全く違うものである。なお、中国の「韓非子」という故事には盾と矛を使った有名な話があり、矛と盾を売っていた商人が「この矛はどんな硬いものでも突き通すことができる。そして、こっちの盾はどんな矛も通さない」と言い、「それではその矛でその盾をつけばどうなるのか」と言われたことから、辻褄が合わない様子を指す「矛盾(むじゅん)」という語ができたという。